
台湾ではここ数年で最低賃金が大幅に上昇している。今回は最低賃金の上り幅をまとめるとともに日本と比較しその背景を考察してみる。
日本と台湾の最低賃金を比較してみた(2025年時点)

2025年現在、台湾の最低賃金(時給)は190NTD(約912円)とされる見込みだ。
一方、日本では地域別の最低賃金制度が採用されていますが、全国平均では1,050円〜1,100円前後となる見込みである。

その差は日本円にして約170円程度で台湾の最低賃金が劇的な上昇傾向といえど、そこにまだ差はあるように感じる。
参照:勞動部 基本工資之制訂與調整經過
https://www.mol.gov.tw/1607/28162/28166/28180/28182/28184/29016/
生活水準との関係
単純な金額だけを見ると日本の方が高いですが、生活費や物価の違いも考慮する必要がある。
たとえば:
- 台湾の家賃は東京などと比べると大幅に安い(台北でもワンルームで月5〜8万円程度)
- 食費や公共交通費も比較的安価(バス約60円、MRT約100円~300円)
- ただし物価は年々上昇傾向(特に都市部)
つまり、「最低賃金の額面」だけで生活のしやすさを判断するのは難しいということだ。
複合的な視点から人々の生活を想像してみると台湾の国内事情がより理解できるかもしれない。
最低賃金上昇のペース比較(2015年→2025年)
台湾の方が上昇率は高く、積極的な最低賃金引き上げ政策を行っていることが分かる。
2015年に200円ほどあった最低賃金の差は2025年には約170円ほどの差まで縮まっていることがわかる。
なぜ日本より台湾の方が最低賃金が急上昇しているのか?
台湾では以下のような政策意図が強く働いている:
- 若年層の待遇改善による「人材流出」の歯止め
- 働き方改革により長時間労働からの脱却
- 国内市場の活性化を目的とした消費力の底上げ
- 国際競争力維持のための賃金水準引き上げ
一方日本は、少子高齢化・地方と都市の賃金格差といった課題を抱えており、慎重に調整されている状況。
まとめ:単なる「金額の比較」以上の視点を
日本と台湾の最低賃金を比較すると、台湾は数字こそ日本より低いものの、上昇ペースや社会的意図の強さが目立つ。
ビジネス進出や人材採用を考える際には、単純な「安い・高い」だけでなく:
- 現地の生活コスト
- 雇用慣習
- 労働者の意識(待遇・環境重視)
といった複合的な視点で判断することが重要。
出典:
- 勞動部(台湾労働部)公式サイト:https://www.mol.gov.tw/
- 聯合報:https://udn.com/
- 中央社:https://www.cna.com.tw/
- 為替レート参照元:Yahoo!ファイナンス、Google 為替換算(2025年6月時点)