
台湾市場に関心を寄せる日本企業にとって、現地消費者の決済習慣を理解することは欠かせない。台湾はキャッシュレス決済が急速に普及している一方、現金文化も依然として根強く存在しており、そのバランスを把握することが成功のカギとなる。
LINE Payの存在感と普及状況
台湾におけるキャッシュレス決済の代表格のひとつが「LINE Pay」である。
台湾ではLINEの普及率が非常に高く、人口の8割以上が利用しているといわれる。このプラットフォーム上に組み込まれたLINE Payは、特に若年層や都市部での利用が進んでいる。コンビニ、ドラッグストア、チェーン系カフェなどで広く対応しており、消費者にとって日常的な支払い手段として定着している。
さらにLINE Payは、単なる決済手段にとどまらず、クーポン配布やポイント還元といったマーケティング機能を備えている点が特徴だ。これにより、ブランド側はキャンペーン施策を直接ユーザーに届けやすく、認知拡大や来店促進につなげやすい。
その他の主要キャッシュレス手段

台湾ではLINE Payのほかにも、多様なキャッシュレス手段が存在している。
代表的なのが「街口支付(JKOPay)」である。台湾発のモバイル決済サービスとして、地元の中小店舗を中心に導入が進んでいる。特に夜市や飲食店での対応率が高く、ローカル消費者の日常に根付いている。
また、「悠遊カード(EasyCard)」も外せない存在だ。本来は交通系ICカードとして普及したが、現在ではコンビニやスーパーなど幅広い店舗で利用可能になっており、現金代替手段として高い浸透率を誇っている。
このように、台湾のキャッシュレス環境は複数のプレイヤーが競合しながら共存しているのが特徴である。
根強い現金文化の背景

一方で、台湾全体が完全にキャッシュレス化しているわけではない。地方の夜市、個人経営の食堂や伝統的な市場では、現金が今も主流である。特に高齢者層はキャッシュレスへの移行に慎重であり、現金を安心感のある支払い手段として使い続けている。
また、店舗側の事情としても、キャッシュレス導入に必要な手数料や機器投資を避けたい小規模事業者は少なくない。こうした背景から、台湾の街角ではキャッシュレスと現金が共存する独特の決済文化が根付いている。
台湾進出企業への示唆
台湾市場に参入する日本企業にとって、この「キャッシュレスと現金の共存実態」を理解することが重要である。都市部や若年層をターゲットとする場合、LINE Payを含むキャッシュレス対応は必須といえる。さらに、街口支付や悠遊カードへの対応も加えれば、より広い消費者層へのアプローチが可能になる。
一方で、現金文化が残る地域や業態を無視することはできない。現金払いを選ぶ消費者にも配慮した決済環境を整えておくことが、現地での信頼獲得につながる。つまり、台湾でのビジネスは「キャッシュレス完全依存」でも「現金一辺倒」でもなく、その両輪をどう組み合わせるかがポイントである。
まとめ
台湾のキャッシュレス事情は、LINE Payを中心とするデジタル決済の拡大と、街口支付・悠遊カードといった多様な手段、さらに根強い現金文化の共存という三層構造に特徴づけられる。
進出を検討する企業は、デジタル決済を活用したマーケティング施策に積極的に取り組みつつ、現金派の消費者に配慮した柔軟な対応を整えることで、よりスムーズに台湾市場へと溶け込むことができるだろう。
参考文献
- 行政院主計総処「台湾におけるキャッシュレス決済利用状況」
- LINE Taiwan「LINE Pay利用動向に関する発表資料」
- 街口電子支付(JKOPay)「サービス概要および導入事例」
- 悠遊卡股份有限公司(EasyCard Corporation)「利用範囲および普及データ」
- 台湾経済研究院「デジタル金融と消費者行動に関する調査報告」