あなたは「17」というアプリをご存知だろうか。今、台湾で一番勢いのあるスタートアップである。17は2015年6月にローンチ、初期はInstagramのように写真をアップしていくアプリだったが、Periscope、日本のツイキャスのようなライブ配信のプラットフォームにピボット。これが功を奏し、若者を中心に爆発的にユーザー数を伸ばしていく。
17ダウンロード推移
上記グラフは台湾のみならず全世界でのダウンロード数になる。2016年5月時点で1,200万DL。台湾のみならず、中国、香港、マカオ、マレーシア、インドネシのアプリランキングの上位にも食い込んできている。アメリカでランキング1位を取った実績もある。
大きく数字を伸ばした要因は四つあると考える。
一つ目は17の創業者の黃立成氏(Jeff)の影響力の強さ。Jeff氏の経歴は少し変わっている。1998年にアメリカでインターネット会社を創業。事業内容は翻訳サービス。ピーク時は80人の社員を抱えていた。その後、会社を日本の会社に売却し、台湾で新たに創業。シリアルアントレプレナーだ。そして、彼にはもう一つの顔がある。Hiphopのアーティストでもあり、ナイトクラブを運営しており、芸能人なのだ。彼の芸能人ネットワークが17にも大きく影響している。ライブ配信機能を追加した際にJeff氏が知り合いの芸能人に100人に電話をかけ加入をお願いし、芸能人達のパワーもあり17日間で3万人のユーザーを獲得。
二つ目の要因は、配信者がSNS上での自身のライブ情報を拡散するスキームだ。17は配信者に利益を分配する仕組みをもっている。
・配信者にトラフィック量に応じたフィー
・視聴ユーザーが配信者に対して送るデジタルコンテンツ(ギフト)課金
の利益をプラットフォームと分配。トラフィックやギフトを増やしたい配信者はFacebookなどのSNSでライブ配信情報を拡散することで、17はユーザーを獲得していった。
トラフィック量のフィーは2015年9月時点で1,000視聴回数で1台湾ドル(日本円で約3.3円)を配信者に分配。2015年9月時点で一回の配信でもっとも稼いだ金額は15,000台湾ドル(日本円で約5万円)となっている。15,000,000視聴回数という計算になる。現在はこれ以上に稼いでいる配信者もいるだろう。ギフトは日本の「SHOWROOM 」のように配信者への投げ銭である。初期の配信者は上記Jeff氏のネットワークを駆使して芸能人が配信したことで興味をもったモデルやブロガーなどの綺麗でかわいい女性が中心。
三つ目の要因はスマホからライブ配信できる気軽さ。台湾でも中国からのライブ配信プラットフォーム「YY」、「9158.com」や東南アジアの「StarLive」、台湾ローカル会社の「LIVEhouse.in」などが以前から存在しているが、プラットフォーム側の用意したスタジオや自宅からのライブ配信が主流となっており気軽に配信できる空気感は作れていなかった。スマホ特化型でライブ配信サービスは台湾には存在していなかったことから、気軽に配信者、視聴者が増えていった。
四つ目の要因は炎上したことで認知度をあげた。何が炎上したかというと、配信者がトラフィック増加を狙いアダルトな内容を配信。アダルトな配信が開始されると即座に台湾版2ちゃんねるのようなサイトにアップされ、多くのトラフィックを獲得。アダルトな内容の取り締まりが緩いと台湾のメディアからバッシングを浴び、その後iOSのApp storeやGoogle playから削除されてしまった。狙った炎上マーケティングではないにせよ、当時台湾のメディアに大きく取り上げられたことによって、結果的に認知度をあげていった。現在は規約を更新し、誹謗中傷やアダルトな内容等はNGとしており、24時間体制の取り締まりを強化し解決していった。
資金調達
17はすでに大型資金調達を二回実施済みだ。2015年11月にシリーズAラウンドでInfinity Venture Partners、Prometheus Capitalから1,000万米ドル(約3.2億台湾ドル)を調達。2016年5月には中国のVC、中國樂體創投から約2,300万米ドル(約7.5億台湾ドル)を調達。中國樂體創投は中国でスポーツ番組を持っており、今回の資本提携によってスポーツのライブ配信や中国への進出を展開を加速していく。
最近ではその道のプロやセミプロが料理教室や食レポ、恋愛相談、音楽ライブなど配信しコンテンツの幅を広げている。また台湾のテレビ局、中天電視とコラボして芸能人育成番組、超強17練習生をテレビにて発信。テレビ番組内で韓国アーティストAOAとコラボしたりと露出の場を増やしている。
今年中に5,000万DLを目指しており、今後も17から目が離せない。