日本最大級のフリマアプリ「メルカリ」が、2024年から台湾市場に本格進出を開始した。
台湾国内では、すでに多くのユーザーが日本のメルカリで商品を購入していたが、今回の進出は、それをさらにスムーズに・公式にサポートする形となる。
なぜメルカリは台湾を選んだのか。背景には3つの重要な要因がある。
台湾進出の概要

メルカリは2024年、台湾向けの販売・物流支援体制を強化。台湾から日本のメルカリにアクセスした際、台湾専用のインターフェースが表示されるなど、ローカライズ対応も進めている。
特徴的なのは、台湾ユーザーがメルカリ上で購入した商品を、台湾国内のセブンイレブン店舗で受け取れるサービスが実装された点。これにより、台湾で日常的に活用されている「コンビニ受取文化」に対応し、ユーザーの利便性を格段に向上させている。
また、決済は台湾元(TWD)に対応し、送料や手数料も分かりやすく表示されている。台湾の若年層を中心に利用者が広がっており、現地市場への適応度は高い。
要因①:越境ECの成長と日本製品人気の高まり

台湾は、越境EC(国をまたいだEC)の成長市場として注目されている。特に日本製品は「高品質・信頼性」の象徴として、コスメ、ファッション、キャラクターグッズ、家電など多くのジャンルで根強い人気を持つ。
台湾のネットユーザーは日本のECサイトを利用することにも慣れており、すでに多くの人がBuyeeなどの代理購入サービスを通じて、メルカリの商品を購入していた。この既存の越境ニーズの存在が、メルカリの進出を後押しした。
さらに、台湾ではZ世代を中心に「個性を重視した中古アイテム」や「一点もの」の需要が高まっており、CtoCのフリマ形式はフィットしやすい市場環境と言える。
要因②:BEENOSグループとの連携体制

メルカリの台湾展開には、BEENOS(ビーノス)グループの存在が欠かせない。BEENOSは海外購入者向けに日本のEC商品を代理購入・配送するサービス「Buyee」を運営しており、メルカリとも既に連携実績がある。
Buyee経由での台湾からの購入件数は多く、台湾はすでに主要な越境EC市場の一つだった。その実績に加え、BEENOSが持つ現地物流ネットワーク、カスタマー対応、多言語運営ノウハウなどが、今回の本格進出を下支えした形だ。
また、BEENOSは台湾現地企業とのコネクションも強く、現地ニーズを的確にフィードバックできる体制が整っている。この「進出前から蓄積されたマーケット理解」が、メルカリの早期定着を可能にしている。
要因③:台湾特有の受け取り・決済文化への対応

台湾では、EC商品の受け取り方法として「コンビニ受け取り」が非常に一般的だ。特に7-ELEVENやFamilyMartなどは、EC受け取りに対応した店舗が多く、利用者も多い。メルカリはこのニーズに応える形で、台湾国内の7-ELEVENでの受け取りを可能にした。
さらに、台湾元での価格表示やクレジットカード決済対応など、ローカライズされた決済体験もユーザー満足度を高めている。
これらは単なる機能追加ではなく、「台湾市場を正しく理解している」というメッセージにもなり、ブランドへの信頼獲得にもつながっている。
今後の展望
現在、台湾でのメルカリは「日本の商品を買いたい台湾ユーザー向け」の片方向サービスに近いが、今後は台湾ユーザー自身が商品を出品するCtoCマーケットプレイスへの展開も視野に入っている可能性がある。
また、他国(特に香港・シンガポール)とのユーザー流通連携が強化されれば、メルカリ発の「アジア横断型CtoCマーケット」が形成される未来も見えてくる。
まとめ:なぜメルカリは台湾だったのか?
メルカリが台湾市場に進出した背景には、以下の3つの明確な要因がある。
- 日本製品への根強い人気と越境ECニーズ
- BEENOSとの連携によるスムーズな物流・運営体制
- 台湾特有のコンビニ文化・決済習慣に対応した設計
いずれも、ただの「進出ありき」ではなく、台湾市場への深い理解と準備が伴っている。今後のメルカリの展開は、台湾進出を考える他の日本企業にとっても大きなヒントとなるはずだ。
参考文献
メルカリ公式プレス
https://about.mercari.com/press/news/articles/20241024_taiwanseveneleven/
https://about.mercari.com/press/news/articles/20240829_crossborder/
https://about.mercari.com/press/news/articles/20250307_mercariglobalshipping/
BEENOS公式プレス
https://beenos.com/en/news-center/detail/20191115_bns_pr/