近年、台湾では英語教育が大きな転換期を迎えている。
政府が掲げる「2030 バイリンガル国家計画」は、英語を“第二公用語”と位置づけ、国全体で英語力を底上げしようという壮大な試みだ。
本記事では、台湾の英語教育の現状や政府の方針、民間の取り組み、そして直面している課題などを紹介する。
1. 英語は“第二公用語”に
台湾政府は「国際競争力を高める」ため、2030年までに英語を第二公用語とする方針を打ち出している。
教育部や行政院が主導し、幼児から大学、さらには公務員研修に至るまで、社会全体で英語能力の向上を目指している。
具体的には、以下のような施策が進行中だ。
- 小学校では英語教育を3年生から実施
- 中高では英語で他教科を学ぶCLIL(内容言語統合型学習)を導入
- 大学では授業の英語化(EMI)を推進
- 公務員や教員向けに英語能力研修を実施
これにより、教育現場では英語が「教科」から「言語ツール」へと変化しつつある。
2. 民間の英語教育も加熱
学校教育に加え、民間での英語教育市場も非常に活発だ。
台湾では多くの児童・生徒が「補習班(塾)」で英語を学んでおり、都市部ではネイティブ講師による英会話教室も一般的だ。さらに、オンライン英会話やアプリを活用した自主学習も浸透しており、特に中間層以上の家庭では、幼児期から英語環境を整える傾向が強い。
一方で、地方部では外国人講師の確保が難しく、教育資源に地域差が出ているのも事実である。
3. 英語教育をめぐる課題
台湾の英語教育は前向きに進化している一方で、いくつかの課題も浮き彫りになっている。
- 教育の地域格差:都市と地方で教育の質や講師数に大きな差がある
- 試験制度とのギャップ:大学入試などは依然として文法や読解が中心で、実用英語と乖離がある
- 教員の育成とサポート不足:CLIL導入には教員側の英語力や指導スキルが問われる
これらを解決するためには、制度改革だけでなく、教員研修や教材整備、民間のサポート体制強化など、複合的なアプローチが必要とされている。
まとめ:英語力は“国の競争力”へ
台湾が国家を挙げて英語教育に取り組む背景には、「国際化」と「人材流出防止」の狙いがある。
グローバルビジネスに対応できる人材の育成は、今後ますます重要になるだろう。
日本企業にとっても、台湾のバイリンガル人材や教育市場は今後の注目ポイントである。教育支援、語学研修、教育サービスの展開など、ビジネスチャンスも拡大している。
台湾の英語教育は、教育だけでなく、社会全体の変革の一部なのだ。
参考文献
- 行政院雙語國家發展中心(国家発展委員会)「2030雙語國家政策發展藍圖」https://bilingual.ndc.gov.tw/
- Taipei Times“Government plans English immersion in schools”https://www.taipeitimes.com/
- Wikipedia“2030 Bilingual Nation”https://en.wikipedia.org/wiki/2030_Bilingual_Nation