2017年5月5 日海外1号店となる「@cosme store 微風広場 台北駅店」が、台北市にオープンした。同じ年6月7日には台北市信義エリアに海外2号店となる「@cosme store 微風信義店」のオープン。同じ月30日には台湾3号店となる「@cosme store 勤美誠品店」を台中市にオープンした。
今回は、 istyle Retail台湾の總經理でもある小野氏に台湾で仕事をしていく上での秘訣を語ってもらった。
台湾へ出店のきっかけ、台湾へくるきっかけ
今、私たちは、2020年に向けて「ビューティー×ITで世界に」をキャッチフレーズに、世界にアットコスメのネットやお店を広げていく準備をしています。ビューティーのウェブサイトで世界で一番になることが目標で、最初の国として台湾を選びました。台湾にはI-TRUE(アイトゥルー)という会社があって、私たちと同じように台湾で化粧品の評価をしているんですけど、今回資本を入れさせていただいてパートナー企業になっているんですね。要は、まずウェブサイトがあってそれからリアルにお店を作るのが日本と同じやり方だったので、台湾の現地の評価サイト「URCOSME(ユアコスメ)」と組んでお店を出すことは強みだと思ったので最初の国は台湾を選びました。
台湾へ活動を広げて、学び、気づき、変化したこと
どこの国に行ってもそうなのですが、お店をやってくにあたって扱うブランドを決めたり、選ぶことが難しいんですね。その国によって販売チャネルがしっかりしていて、日本と同じようにはできないんです。例えば、日本では資生堂の化粧品を普通に扱っていても、台湾では百貨店でも売っておらず、ドラックストアにも出しておらず、個人経営化粧品そこには売っているんです。今回は、アットコスメが台湾に出るにあたって、資生堂と一年ほど協議を重ねて、やっとロードサイド以外の駅ナカや百貨店の中に出すことができました。私たちが初めてです。このように国によって、売り出せるブランド、売り出せないブランドがあってそこを選んでいくのは非常に難しい。
台湾に出店してから大変だと感じること、また販売方法はどのようにしているか
やはり一番大変だと思うのは、日本で扱っているブランドをこっちでは扱えないことですかね・・・
あとは、日本では定価で販売されているブランドも、こっちだとドラックストアで値引きされて売られていたり価格競争に関しては台湾の方が厳しいです。また台湾のお客さんには値引きや、おまけがつくなどの特典が特に響くのでその辺はちょっと日本と違うよね。ですが、私たちのお店は値引きはしません。値引きをしないでいかに商品を売っていくかが今考えなきゃいけないところです。買一送一(一個買うと一個無料でもらえるという意味)もあんまりしません。買一送一をやったりするブランドはある程度決まっていて、やらないブランドもちゃんとあって。私たちはやらないブランドを大事にしながら育てていくことをメインにやっています。
日本から新しいブランドを持ってくるときも、まず私たちは台湾には3店舗しかないのでマス展開ができません。台湾にはたくさんのドラックストアがあって、商品を売り出せばたくさん売れます。その代わり値引きはされちゃいます。なので、まず初めに日本のブランドに、あなたたちはどっちの方針で行きますかと。ブランドを大切にして欲しいお客さんに値引きをせず、長くブランドのイメージを築きながら長く売っていくか、それともマス展開するのか、マス展開の場合は強い販売店が価格を決めるので自分たちでは決められません。どこかの店が商品を安くしたら、他のお店はもっと安くします。そうすると価格はどんどん下がっていくから、ブランドの価値も下がっていっちゃうわけです。ただ、私たちのところで売れば、販路はすごく狭いけれども値引きはしないし、スタッフがしっかりとカウンセリングするし、ウェブの評価とうまく連動しながらブランドを育てていきます。私たちはブラントイメージをキープすることを大事にしながら販売する戦略です。
日本と海外の客層の違い
客層はそんなに違わないかな。スキンケアのいい商品が欲しい時は百貨店いくし、アイメイクを濃くしたい時はプチプラの商品買ったりだとかで、今の若い人たちは使い分けがうまいと思います。ただ、それは台湾人の方が上手だと思う。それはスキルが高いわけではなくて、お金にシビアだから。その辺は工夫するのが上手です。例えば、付けまつ毛を私たちのお店で買うと4つ入ってだいたい1000円くらいなんですけど、こっちの問屋にいくと舞台用の付けまつ毛が2ダースで売られてあって、それを台湾人は買って、みんなで分けます。そうすると一人当たりがお店で買うより全然安い。そういうところは日本人よりも使い分けが上手です。その一方で、外資系とかOLのお客さんは、私たちのお店にきてパパッと買ったりしています。
グローバルマーケットでの成功要因
現地のことをよく理解して、程よく現地化しつつ、基本的な方針は絶対ぶれないこと。価格を現地に合わせたり、売り方を合わせたり。ただ、ブランドの根本的なところ、芯はぶれてはいけない。私たちの場合は、値引きはせず、ブランド側とうまく協調しながらお客さんにいいものを提供する。またアットコスメの評判のいいものを扱う、お店とウェブが連動したプロモーションを売っていくことが私たちの芯の部分です。
また、台湾のお客さんは日本のお客さんより滞在時間が長いんですね。試供品を試したりして長くお店にいてくれてます。なので、反対に現地に合わせていることと言ったら、試供品をより試しやすい環境を作っています。日本は効率をすごく考えているので店内が少し狭いですが、台湾店では、座って化粧できるスペースやたくさんの鏡、メイク道具も日本よりも多く置いています。それで、より滞在時間を長くしようと考えています。さらに、台湾人は自撮りが好きなので、全身が映る大きな鏡を置いています。それは日本にはないです。
他には、台湾人はキャラクターが好きなので、私たちのお店のキャラクター、ミカエルをいろんなところで使っています。店頭にフィギュアを置いたり。日本では会員カードは普通のアットコスメの柄にしてますが、台湾ではミカエルを使っています。
今後のチャレンジ
台湾の場合は、年間に2〜3店舗増やしていく予定です。6月は香港に第一号店を出してそこから年内3〜4店舗予定、10月にはバンコクにお店を出す予定です。香港はもともとお店を出したかった候補の一つで、またユアコスメのサイトに使われている漢字は香港と同じ繁体字なので香港の人もかなり見ています。バンコクの市場はアジアの中で大きい方なのでお店を出したいですね。
去年、マレーシアの化粧品のEC販売の会社もグループ化しているので、今後マレーシアにアジア版のアットコスメのウェブを作るかもしれないです。マレーシアは、中国語がわかる、華僑の人が多い、英語も公用語で使える、シンガポールに近い、良い条件がたくさんあるのでそこに展開していきたいですね。
お店としては、制度品を将来的には販売できるようにしたい。そのためには、私たちのお店は安売りせず、化粧品を大事に売っていることを理解してもらわないといけない。日本ではすでに理解してもらっているので展開できているんですが海外に来ると全く別なので理解してもらうのに数年かかるかもしれない。なので、それらのブランドを今後も入れていくために地道に真面目に一生懸命やっていくということかな。
今でも1ヶ月に2、3個は新しいものが入っています。それは今後も継続しつつ、大手の化粧品も販売できるようにするのが課題です。そのためには従業員の接客レベルをどんどんあげることが大事だと思います。今、6名が2週間くらい日本で研修していて、そこで日本の商売の仕方をしっかりと身につけてもらってきてほしいです。
インタビューを終えて
台湾でのアットコスメの店舗面積は204平方メートルで、一日あたりの駅利用客数が約52万人の台北駅舎内にある通路内にお店を開いている。冒頭にも書いたが、現地の評価サイト「URCOSME(ユアコスメ)」とサービスの統合を開始したことで、現地の人々の生の意見を販売販促に取り入れお客さんのニーズに目を向けることができるので、さらにユーザーに対して高いサービスの実現ができる。台湾に進出してまだ一年も経っていないのにすでに台湾人に人気があり、その人気を維持し続けている。今後、アットコスメは台湾以外にアジア全体に展開していく予定だが、どこに行っても付いてくる困難に向かい合い、最初の方にも記載した通り、ITで人と情報を繋げる世界一のビューティーのウェブサイトになってほしいと思った取材だった。