日本における台湾映画の現状
台湾映画とは読んで字のごとく台湾発の映画のことである。最近だと、乃木坂48の齋藤飛鳥が主演をした「あの頃、君を追いかけた」のオリジナルが台湾映画だということでピンとくる人が多いかもしれない。
実際、日本で台湾映画を見る機会は少ない。輸入されても、大きな映画館で上映されることは少なく、比較的キャパシティが狭い映画館で短期間で上映されることが多い。
以下のグラフで分かるように、日本で上映される台湾映画の本数は年によって大きく異なる。このグラフは2012年で終わっているが、ここ数年の台湾ブームで、映画館で上映されるだけでなく、過去の作品を鑑賞する機会も増えている。
実は台湾映画は、世界的に評価されている作品も多く、また日本が関係している作品も多いのだ。
日本が関係しているというのは、大きく分けて2つあり、作品の舞台が日本に関係している、または日台合作作品である、というものである。以下の資料は、2017年の台湾の合作映画のリストである。2017年の日台合作映画は2本であるが、2016年は1本で、毎年1,2本というのが現状である。
ヒットする台湾映画の特徴
たとえば、日本映画としては、アニメ映画が世界での評価が高いというように、台湾映画のヒット作にも共通の特徴がみられる。
ヒットする台湾映画は、「青春」「歴史」の両方、またはどちらかを特徴としているものが多い。
「青春」は、最近の多くの日本映画に見られるような漫画の世界の映像化作品というよりは、もっとリアルで甘酸っぱくて胸が絞られるような気持ちになる、青春を懐古するような雰囲気のある作品が多い。学生生活の雰囲気、登場人物がおかれる環境等が日本に近く、日本人が感情移入しやすい。
また、「歴史」の方面では、台湾には日本占領時代(日本統治時代)という期間が存在するため、その時代に関係した作品がいくつも存在する。
映画を娯楽として楽しむという面でも、台湾と日本の歴史を学ぶという面でも、台湾映画は日本人に親しみやすい作品が多いといえる。
台湾でヒットした日本が関係する映画
今回は、ここ数年で台湾で大ヒットした、日本と関係のある映画を3作紹介する。
台湾好きには外せない定番の作品ではあるが、なんと3作品とも台湾映画の興行収入上位10位以内に入っているのだ。ご存じの方もいるだろうが、ここでもう一度振り返っていただけたらと思う。今回紹介する3作品は、大手レンタルビデオショップやネット上で日本版がレンタルや購入可能なので、ぜひ手に取ってみてほしい。
「海角七號」(日本語名:「海角七号 君思う、国境の南」)
2008年夏に台湾で公開された魏德聖監督作品である。興行輸入5億3千台湾ドルを記録し、現在台湾映画史上1位の記録である。日本でも公開されている。
舞台は、2000年代台湾の南部。台湾人の青年の阿嘉と日本人女性の友子とのラブストーリーである。そして、この物語の中心にあるのは、日本占領時代に恋に落ちるも一緒にいることがかなわなかった日本人男性と台湾人女性の手紙の存在なのである。この手紙から2人は始まり、この手紙で2人は結ばれると言っても過言ではない。歴史が関係しているとはいえど、ラブストーリーがベースなので、老若男女が見やすい作品である。
賽德克·巴萊(日本語名:「セデック・バレ」)
2011年のこちらも魏德聖監督作品である。二部作になっており、どちらも台湾映画興行収入ランキング10位以内につけている。
舞台は、日本占領時代。台湾の先住民セデック族による抗日暴動である霧社事件が描かれている。日本でも2013年に公開されている。7億台湾ドルを費やした壮大な作品で、メインキャストの多くが先住民の血を持つ俳優であったり、日本兵役は日本の俳優が演じていたりと、かなりリアルな作品である。日本の台湾占領時代(統治時代)を知るには欠かせない作品である。
KANO(日本語名:KANO 1931海の向こうの甲子園」)
2014年 の馬志翔監督作品である。日本占領時代(日本統治時代)の1931年に台湾代表として甲子園に出場した嘉義農林高校を描いた作品である。登場人物のほとんどが実在した人物であり、キャストも野球経験があるなど、こちらもリアリティーあふれる青春スポ根系の映画だ。しかし、ところどころに日本占領時代をひしひしと感じさせる場面があり、歴史要素も濃い作品である。
去年の大ヒット作品「比悲傷更悲傷的故事」
ここで、昨年台湾内外で大ヒットした映画を紹介したい。「比悲傷更悲傷的故事」(英語名:More Than Blue)は、2018年の林孝謙監督作品で、オリジナルは2009年の韓国の作品である。台湾以外に香港、韓国、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド、アメリカ、カナダで公開された。台湾での売り上げは、2.4億台湾ドル、世界全体での興行収入は、48億台湾ドルの大ヒット作品となった。
それぞれの理由で家族を失った2人の男女が、家族のように一緒に暮らしていくうちに惹かれあっていくのだが、実は、青年のほうが白血病を患ってしまう。自分の死後、彼女が幸せになれるように、白血病を隠し、彼女のために幸せをさがすというストーリーである。切なすぎて、涙を流さない観客はいないと言うことができるほど、心に響く、思いっきり泣けるラブストーリーである。日本では大阪アジアン映画祭のみの上映であったが、英語字幕付きでDVD等が出ているので、ぜひ見てほしい。
現在大ヒットの予感「返校Detention」
現在、台湾で話題になっているのが9月20日(金)に公開された「返校Detention」である。オリジナルは台湾のゲーム「返校Detention」で、かなりオリジナルに忠実にストーリー化されている。台湾の日本占領時代以降の蒋介石ら国民党による白色テロ時代を舞台にしたもので、ホラーと歴史の融合した、メッセージ性のある作品となっている。
オリジナルのゲーム自体も、2017年の発売以降かなり人気があり、アジアだけでなく欧米でもヒットした。日本語版も出されている。
そして、今回の映画版「返校Detention」は、初日の売り上げがなんと1800万台湾ドルを超え、ここ数年の台湾映画史上4番目に高い成績を叩き出したのだ。さらに公開後初の週末、21日の1日の売り上げは2750 万台湾ドルに達し、「セデック・バレ 第一部 太陽旗」の初日の売り上げ2300万台湾ドルを超えるものであった。
また、ヤフー台湾の映画ページでも期待度95%かつ、満足度が5分の4.4という高評価を残している。
オリジナル作品が各国で人気だったのに加え、初日から売り上げ好調、口コミ好評価の本作は、台湾映画史上記録に残る大ヒットの可能性が大きい。ゲームに日本語版もあるため今後日本に輸入される可能性も高い。要注目の作品である。
ライター:駒田優希