日本を訪れる外国人観光客の中でも、台湾からの旅行者は常に上位を占めている。その中でも特に注目されるのが「リピーター層」である。初めて日本を訪れる観光客と比べ、リピーターは行動パターンや消費傾向に特徴が見られる。本記事では、台湾人観光客の訪日リピーターの実態と、その観光行動の特徴について解説する。
台湾からの訪日観光客数の推移
台湾は地理的に近く、飛行時間も短いため、日本は最も身近な海外旅行先のひとつである。訪日外客数統計によると、台湾からの訪日観光客数は長年安定して高水準を維持しており、コロナ禍以前は年間約490万人に達していた。回復後もその需要は強く、特に若年層からシニア層まで幅広い層に支持されている。
訪日リピーターの割合と背景
台湾人観光客の特徴として、リピーター率の高さが挙げられる。観光庁の調査によれば、台湾人の訪日客のうち約7割がリピーターである。これはアジア圏の中でも突出して高い水準だ。その背景には以下の要因がある。
- 近距離ゆえの気軽さ:週末旅行や短期休暇でも訪問可能。
- LCCを含む航空路線の充実:台北・高雄から全国各地への直行便が豊富。
- 日本文化への親和性:アニメ、ドラマ、食文化などに強い関心を持つ。
リピーターの観光行動の特徴
リピーターは初回訪問者と異なる行動をとる傾向がある。
- 地方志向の高まり初回は東京・大阪・京都などの定番都市を訪れるが、リピーターは北海道、九州、東北など地方都市へ足を延ばす傾向が強い。
- 体験型消費の重視観光地巡りよりも、温泉体験、料理教室、農業体験など「その土地ならではの体験」に価値を見出す。
- ショッピングからライフスタイル体験へかつては化粧品や家電製品の購入が中心だったが、近年は「食文化」「自然」「文化体験」に比重が移っている。
- SNSを通じた情報収集と発信Instagramや小紅書(RED)などを活用し、訪問先を事前に調べたり、旅行体験を発信する傾向が強い。
今後の展望と企業への示唆
台湾リピーターは今後も安定した訪日需要を支える存在となるだろう。特に地方自治体や企業にとっては「リピーターが求める新しい体験価値」をいかに提供するかが重要となる。インバウンド施策を検討する際には、定番観光地紹介だけでなく、地域独自の文化・体験を訴求する戦略が鍵となる。
まとめ
台湾からの訪日観光客はリピーター率が非常に高く、その行動は多様化・個別化している。近距離・文化的親近感・交通利便性を背景に、今後も安定的に増加が見込まれる。インバウンド市場を開拓する企業は、台湾リピーターが求める「体験型・地域特化型」の観光資源を発掘し、SNSを活用した情報発信を行うことが成功のカギとなる。
参考文献
- 観光庁「訪日外国人消費動向調査」
- 日本政府観光局(JNTO)「訪日外客統計」
- 日本政策投資銀行「訪日外国人旅行者のリピーター動向」
- 国土交通省 観光白書