
トラベルテック企業として急成長を遂げてきたKKdayは、AI技術を軸に観光産業のデジタルトランスフォーメーション(観光DX)を推進している。創業10周年を迎えた同社は、資金調達、技術開発、戦略提携を通じてアジアにおける観光体験の新しい形を構築しつつある。
1. 大規模資金調達と事業基盤の強化
2024年12月、KKdayはシリーズDラウンドにおいて約7,000万ドル(約100億円)の資金を調達した。出資にはクールジャパン機構、台湾の国家発展基金、ZUU & De Capital Fund、彰銀創投、ダーウィン・ベンチャーズなどが参画している。
調達資金は、AIを活用したサービス高度化、観光事業者向けのDX支援、ならびに日本市場を含むアジア全域での事業拡張に投じられている。
2. AI専任チームによる技術革新
KKdayはAI専任チームを設立し、プロダクト開発を強化している。検索機能の最適化、カスタマーサポートの自動化、旅行コンテンツ生成などを進めるほか、利用者の嗜好に応じた旅行プランの自動提案や、リアルタイムでの旅程調整を可能にする仕組みの構築にも注力している。これにより、旅行体験の高度なパーソナライズ化が現実のものとなりつつある。
3. SaaS「rezio」による事業者支援

同社が開発したSaaS型予約管理システム「rezio」は、予約、在庫、決済、電子チケットを一元管理するプラットフォームである。日本国内ではすでに1,000社以上の事業者が導入し、累計利用者数は950万人を超えている。
具体的には、日光東照宮や富士山登山の入山管理に導入され、混雑緩和や業務効率化を実現しており、観光地運営の高度化を支援する基盤としての役割を果たしている。
4. 日本市場における戦略的展開
KKdayは日本市場でのプレゼンス強化を進めている。リクルートが運営する「じゃらん」や「食べログ」との提携により、宿泊・飲食とアクティビティの一体型予約を提供。また、Activity Japanの傘下化により、国内観光商品の拡充も実現した。
これにより、訪日観光客にとっては旅行に必要な要素をワンストップで予約可能となり、利便性が大幅に向上している。
5. 地域観光への貢献とDX推進

KKdayは自治体や観光関連団体との協働を通じ、観光DXの推進にも取り組んでいる。オンライン予約導入や多言語対応、顧客接点のデジタル化、データドリブンなマーケティング支援を提供し、地域経済の活性化に寄与している。
特に日光東照宮の事例は、オーバーツーリズム対策や運営効率化に資する先進的なDX導入モデルと位置付けられている。
結論
KKdayは「旅×テック」を旗印に、AIを中心とした技術革新と事業展開により、観光産業の未来像を描いている。資金調達による基盤強化、AI活用によるパーソナライズと効率化、SaaSによる事業者支援、日本市場での戦略的提携、そして地域観光との協働を通じ、観光DXの実現を牽引している。
同社の取り組みは、アジアにおける観光の新たなインフラ構築と、グローバルな観光産業の進化に直結するものといえる。
参考文献
- KKday公式プレスリリース「シリーズD資金調達に関するお知らせ」https://www.kkday.com/ja/corp/news_fundraising2412
- 36Kr Japan「観光DXとAI活用を強化するKKday、シリーズDで約100億円を調達」https://36kr.jp/319688
- JETRO「成功事例:KKday」https://www.jetro.go.jp/invest/investment_environment/success_stories/kkday.html
- 観光経済新聞「アフターコロナの旅ナカ市場 KKdayグループ日本支社」https://www.kankokeizai.com
- HONICHI「インバウンドニュース:KKdayの取り組み」https://honichi.com/news/2024/06/25/202406_inbound_kkday