日本でもブロックチェーンに関する話題はずっと盛り上がっており、ニュースサイトを見ていると様々な分野への活用が始められている印象がある。それは台湾にも言えることで、ブロックチェーンの活用の幅は確実に広がっており、毎日ブロックチェーンに関する何かしらニュースが更新されている。今回は台湾国内のブロックチェーンを取り囲む環境とブロックチェーンを活用したサービスについていくつか簡単に紹介したいと思う。
ブロックェーンサービスの発展土壌はある?
このTAIWAN LABO内でも何度か言及しているが台湾にはシェアリングエコノミーが自然と生活シーンに溶け込んでいる。となるとシェア出来ることが前提となっているブロックチェーンが様々なサービスに取り入れられようとしているのは自然な流れではある。
また行政院も台湾を2025年をめどにデジタル国家として成長させる計画を打ち出している他、同分野(AI、ブロックチェーン、AIoT、クラウドなど)に関わるサービスを持つスタートアップを中心に支援にも力を入れいているのも追い風になっているだろう。特に新北市は「新北市區塊鏈推動辦公室(新北市ブロックチェーン推進オフィス)」を設置し、ブロックチェーン技術を活用したサービスやシステムの発展を促している。つい最近の出来事でいえば淡江大学と産学連携に関する覚書を結び、将来的に両機関間の人材の交流を盛んにすることで研究、産業のさらなる発展を期待している。
今年2018年7月には世界30か国からのブロックチェーンに関する著名人、台湾政府機関関係者が集った台湾史上最大のブロックチェーンサミット「2018 Asia Blockchain Summit(亞洲區塊鏈高峰會)」が開催された。このサミットの呼びかけ人で立法委員の許毓仁氏は台湾国内でブロックチェーンに関して活動を展開していることで有名だが、このサミットの中で同氏は台湾を「Blockchain Island」にするという目標を語っている。
そして先日「台湾のスタートアップシーンに注目!国内主要プレイヤーもまとめて紹介」内で取り扱った台湾最大のアクセラレータ―であるApp Worksもブロックチェーン関連のスタートアップに注力し始めている。というのも、17期生の募集にあたり、AI及びブロックチェーン領域のスタートアップの学習や成長促進を積極的に支援していくことを宣言していた。
同じアクセラレータ―の話題をもう一つ取り上げると、2018年10月には「ABA(Asia Blockchain Accelerator)」という台湾初のブロックチェーンのためのアクセラレータ―が誕生している。目標として、年末までには10ものスタートアップの育成をし、2年間で100億円の価値創造を掲げている。加えて、来年の中頃までには「數位貨幣基金(マネーファンド)」と「數位貨幣交易所(通貨交換所)」を設立し、直接投資したり、スタートアップ同士が取引を行える状態を作ることでブロックチェーンスタートアップのエコシステムを形成しようと試みている。
ブロックチェーンに関するコミュニティも盛況
ブロックチェーンのコミュニティインキュベーターとして有名な「Bitzantin」はラボを併設したカフェで、ブロックチェーンサービスを運営するスタートアップ関係者や投資家が頻繁に集まるイベントを行い、コミュニティを形成を促している。ブロックチェーンに限った話ではく、台湾ではコミュニティを形成して勉強やイベントを開催することがよく行われている。
余談ではあるが、Bitzantinのパートナーである「Block Tempo」は台湾国内外のブロックチェーンに関するニュースを紹介する専門メディアとして注目されている。台湾のブロックチェーン事情を把握するのに非常に有用なメディアであるので紹介しておきたい。
台湾国内のブロックチェーンを活用したサービス
現在進行形でブロックチェーンを活用した様々なサービスが大小問わず誕生しているわけだが、今回は過去に台湾のビジネスサイトに取り上げられていたようなサービスをいくつか紹介したい。
Bitmarkは、世界の資産としてのデータに対する価値の定義とその価値を守るための法的コントロールを確立・整備するためのブロックチェーンを用いて確立されたシステムとされている。というのも、現実世界で所有権は実際に目に見えるもの(実物)とアイデア(知的財産)には適用されるものの、デジタル世界にはまだ適用されていないことを課題とし、個人の健康・医療データ、その他のデジタルグッズなどのデータについての経済的価値を定義・可視化し、所有権を認められる状況をつくることで個々人がそれらに基づいて経済活動を行えるようばサービスを提供している。このBitmarkは「Alibaba Entrepreneurs Fund」から投資を受けている。
OwlTingはホテル予約や食品トレーサビリティシステムなどを始めとして様々な領域においてブロックチェーンを用いたサービスを提供しているEC、アプリ開発・運用を行うスタートアップ。ブロックチェーンに基づいたホテルPMSシステム(ホテルの予約管理などを行うシステム)を開発したことによって過剰予約を防いだり、人件費の削減に貢献している。また世界で初めて食品トレーサビリティシステムにブロックチェーンを用いた会社となっており、ブロックチェーンの書き換えができないという性質を活用し、安全な食品提供に貢献している。なおこのOwlTingに対して日本のSBIホールディングス株式会社の子会社であるSBIクリプトインベストメント株式会社が出資行っている。
KKFARMという台湾のエンターテイメント系の会社がブロックチェーンシステムを提供するBitmarkと中国信託と協働して提供している台湾初のブロックチェーンを活用したデジタル音楽共有プラットフォーム。作曲者は自分の曲を自分で管理し、収益につなげることができる仕組みになっている。特徴としてはSoundscapeを利用することで利用者は1回のアップロードで10もの音楽プラットフォーム(Apple Musicなど)に楽曲をアップロードできることや、オンライン上に表示されたボタンをクリックするだけで支払い請求をでき、口座にお金が振り込まれる手軽さである。
大学病院の運用システムに患者の過去病歴情報やカルテを登録することで、病院内だけでなく、近隣の病院や診療所でも利用ができるようになり、患者に適した医療を提供することを可能にしている。
まだまだ利用者数は少なく未整備な部分も多いのが現状ではあるが、台湾初のブロックチェーンを活用した越境ECモール。このECモール内ではMOCとMOTと名付けられた2種類のトークンをベースに取引が行われる。商品の取引にこのコインが用いられるのはもちろん、いわゆる商品購入時に付与される「ポイント」がこのトークンでバックされるのが特徴となっている。仮想通貨と聞くと身構えてしまうような人たちにとっても分かりやすい形でサービスを提供している。
各店舗が独自に発行するポイントを自社が独自発行するトークンを介在させることによって、ポイントの価値交換、移動プラットフォームを形成している。これによって消費者は期限切れのポイントを有効活用させることにもつながり、店舗側はブロックチェーンの特性を生かした顧客管理システムが可能になっている。現在サービスを展開して2年になるが、既に会員数は15万人に達しており、加盟店舗は700にも及んでいる。今まで以上にサービスをスケールしていくために、台湾国内でも広く浸透している共通ポイントサービスUUPONとの協働について交渉していることが先日Yahoo奇摩のニュース内で紹介された。(UUPONの説明は過去記事「台湾人も大好き!台湾の人気共通ポイントサービスまとめ!」を参照)
台湾のブロックチェーンサービスにこれからも注目!
調べてみてわかったことであるが、発展途中のサービスを合わせるととても記事内で扱えないような数のサービスが台湾国内では増えており、またブロックチェーンを用いた事業を行うスタートアップやそれらを支援するインキュベーター、アクセラレータ―も盛り上がりを見せている。今後もブロックチェーンにまつわるホットな話題があればTAIWAN LABO内で取り上げていきたい。
ライター:宮路菜月